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街のセンスを捉える技術 - ホイアンの色・光・植物を分解して読む


ホイアンに来ると、多くの人が「センスがいい」と感じる。しかしその感覚を言語化しようとすると、「おしゃれ」「かわいい」「古くていい感じ」程度で止まってしまうことが多いです。何がそのセンスを作っているのかを具体的に分解している人は、あまり多くありません。

この問いに正直に向き合ってみると、ホイアンの魅力が個別の建物や装飾にあるのではなく、街区レベルで何かが統合されているという事実に行き着きます。

配色と素材を分解する

ホイアンの配色はシンプルです。

黄土色からマスタードにかけての壁。それに対して濃い木部と瓦が配置されます。そこに暖色の提灯が加わり、緑の植物とピンクの花が点在します。

単純に列挙すると普通のように見えるが、重要なのはこれらの組み合わせが通りを歩いても崩れないという点です。隣の建物が全く違う配色になることは少ないです。素材も同様に、木・土壁・石が支配的で、金属やガラスが突出していません。この一貫性が、街全体を「一つの作品」として見せています。

UNESCOが1999年にホイアン旧市街を世界文化遺産に登録した際の評価基準の一つは、「15世紀から19世紀にわたる東南アジア交易港の exceptionally well-preserved な例」であるという点でした。日本・中国・ポルトガル・オランダなど複数の文化が重なった港湾都市としての歴史が、建築的な多様性を内包しながらも全体の統一感を持つ街並みを生み出しています。

光環境が視覚言語を絞り込む

ホイアンの美しさを理解するには、中部ベトナムの光環境から考える必要があります。

熱帯の強い光は、物の輪郭と色面を鮮明に立てます。陰影がくっきりするため、ディテールよりも面と線の構成が見えやすくなります。これはヨーロッパの柔らかい拡散光の中で発達した建築とは、根本的に異なる条件です。

また、ホイアンは港町であり、河に面した正面性が強いです。ファサードが見え方の中心になります。装飾文化も、写実的な陰影表現より輪郭と反復のパターンに寄っています。気候条件が、選ばれやすいデザイン言語を絞り込んでいるのです。

植物モチーフが街と工芸を接続する

ホイアンを歩いていると気づくことがあります。実際の植物と、器や布や建具に描かれた文様が、ほぼ同じモチーフを共有しています。

実景の花がそのまま陶器の文様になり、葉の形が建具の透かし彫りに転用されます。植物はここで、景観と工芸をつなぐ共通言語として機能しています。街全体が一つの参照元を持っているため、部分が増えても全体が崩れにくくなっています。

「センス」の正体

「センスがいい」という感覚は、突出した一つの要素からではなく、複数の要素が街路レベルで整合したときに生まれます。色のパレットを街区レベルで限定する。光環境に合わせた視覚言語を選ぶ。自然モチーフを実景・建築・工芸・テキスタイルの複数の層で使う。これらは、「センス」を偶然ではなく設計の問題として扱うための原則になります。

参考リンク